甘くて脆い私たちの生活/ハッピーシュガーライフ
7月から毎週楽しみにしていたアニメがついに終わってしまった。最初書店で見かけたときは「え?サイコホラー?絵柄やタイトルと一致してなくない?大丈夫?」と思っていたのに、なかなかエグかった。へへ。もうね、これ以上にないってくらい完璧なメリーバッドエンドでした。大拍手。本当にありがとうございました。
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知らないし興味もないけどブログを読んでくださった方のために簡単なあらすじ。
―彼女の愛は、甘くて痛い。― 松坂さとうには、好きな人がいます。その人と触れ合うと、とても甘い気持ちになるのです。きっとこれが「愛」なのね。彼女はそう思いました。この想いを守るためなら、どんなことも許される。 騙しても犯しても奪っても殺してもいいと思うの。角砂糖のように甘い、戦慄の純愛サイコホラー。
(公式サイトHPより引用)
今作のヒロインは「松坂さとう」 虚無感から男遊びを繰り返していた美少女JK。そんなある日、彼女はとある幼女と出会い、本物の愛を知ることになります。その幼女の名前は「神戸しお」 それ以来男遊びはパッタリやめて、母親に捨てられたしおを監k…保護することに決めたさとう。そんなしおとの生活はとびっきり甘くて、きらきらしていて。この想いを守るためなら、どんなことも許される。そんな想いで手段を選ばずにしおとのハッピーシュガーライフを守ろうとする可愛い女の子のお話です。
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はい。ゆるふわ日常百合アニメじゃないの?と思った皆さん解散です。お帰りください。出口はあちらです。今ならまだ戻れます。ゆるふわなのは登場人物の頭だけです。まず、この世界にまともな人間は誰1人いません。それぞれ愛の形を持っているけれど、どこか歪んでいる。愛情至上主義女子高生、ストックホルム症候群幼女、スリル大好きドM変態教師、ロリコンと化したレイプ被害者、人の幸せを決めつける実兄、母性カンストババアなどなど、さまざまな登場人物が物語を狂わせていきます。ちなみに唯一の良心だった親友は秘密を知った代償としてこの世から消されます。南無。
そして、こちらが友情より愛情を優先させてしまったヒロインのさとうちゃん。こんなに可愛い顔して脅迫、暴力、殺人本当になんでもやります。なんなら死体処理や放火も平気で人にやらせます。倫理観なんてものはゼロです。トチ狂っています。でも、そこがいい!さとうのすごいところは「愛を偽らなければ何をしても許される」と本気で思っているところ。「他の人に好きって言っちゃったの…」と申し訳なさそうに謝り、「しおと一緒にいたい」というたったそれだけの理由でここまで行動できるさとうを、純愛と呼ばずになんと呼ぶのでしょう。
まあこの日常離れした狂気さが「ハッピーシュガーライフ」の魅力ですよね。でも、他人事のように思っていたら大間違い。私たちは誰だってさとうやその他登場人物になりうる可能性があると思います。想いが強くなればなるほど狂気へと変わっていく気持ちもわからなくないし、これからどんな性癖に目覚めるかなんて知る由も無い。それらが理性で抑えられているうちはいいですけど、いつ感情が溢れるかなんて私たちにはわからないですよね。じゃなきゃ、犯罪とか起きないし。だから、私は日常生活の延長線上にある物語だと思って観ています。
私がこの作品で一番衝撃を受けたエピソードが第10話「星空のプロポーズ」で、しおが初めてさとうに反抗を見せるシーン。
大まかな話の流れがこちら。
何も話そうとしないさとうに怒りをみせるしお→「私いる意味なくない?」さとう絶望→出会いの回想シーン→何だかんだハッピーエンド!
衝撃ポイント
①甘い生活に訪れた突然の不穏
②さとうが崩壊しかける
③しおの意味深な発言
それでは具体的な流れとともにアクセル全開で解説していきたいと思いますので、シートベルトはしっかり締めていきましょうね!
突然、何の理由も告げずに「どこかへ逃げよう」と言い出したさとう。自分も頑張れると必死に訴えますが聞く耳を持たないさとうにしおは「私のことなんだと思ってるの!?そんな人形みたいな私はいらないじゃん」と怒りをぶつけ部屋に籠城します。はい。ポイント①です。え!?しおちゃん怒るのー!?怒るんです。激おこぷんぷん丸ですよ。もうね、可愛いんですよ、これが。でも、いきなりのシリアスシーンに視聴者全員ビビり散らかしました。
今までいちゃらぶ生活を送っていたこともあり、さとうは当然「私の何が悪かったの?」と絶望するのですが、この時の焦りようといったら。冷静沈着なさとうがこんなにも動揺している姿を見るのは初めてのことでした。部屋に閉じこもるしおに「私がダメなときに色々してくれたんだよね?すごくうれしかった!でもそれと同じくらいごめんねって思ったの」と一生懸命伝えながらも、心の中で「早く出てきて」と焦りを募らせるさとう。お待たせしました。ポイント②です。是非本編で花澤香菜さんの素晴らしい演技とともに確認してほしいのですが、しおに対する想いが「この愛を失っては困る」という自己愛でしかなく、そんなしおに愛を貫くことでしか自分を成立させることができないと深く印象づけるシーンでしたね。本当に気持ち悪かったです。
ここでさとうが絶望している一方で、母親に捨てられたしおとさとうが出会った回想シーンが流れます。
『行っちゃうよ。追いかけないの?』
「いいの…。だってもうあの人の瓶は、私がいるだけで壊れちゃうんだ。それが分かったから、もういいの」
『追わないのが愛なの?』
「私は私が生きるためにはあの人(母親)に生きててほしかった。だから違ったんだよ。それはきっと愛なんかじゃなかったんだ」
はいストーップ。なんか引っかかりますよね。ここがポイント③です。今まで抱いていた母親への感情が愛じゃないと気付いたしお。生きるためには彼女が必要だったけど、私が一緒にいたら心が壊れてしまうから離れた。このことから、もしかしたら、さとう自身だけでなく依存先(寄生先)である彼女を愛しているのかもしれないと思いました。その後のモノローグで「大丈夫。外は怖いけどあのときとは違う。さとちゃんはお母さんとは違う。」と語ります。また捨てられることが怖いのだとしたら、一度は信じた愛が失われるのが怖いとしたら?
「しおちゃんは何もしなくてもいいよ」
「私もうダメにならないように頑張るから」
「しおちゃんといればなんでもできる」
精神的にも肉体的にも疲労した顔つきでそう言うさとうが、自分を捨てた母親の姿と重なり、このままではさとうの心が壊れてしまう(=生活が失われる)ことを悟ります。
だから、守られるばかりでなく、自分が守る立場にならないといけない。そうしないとさとうはいなくなってしまう。しおは語ります。
「ねえ二人で戦おう。私だってさとちゃんのこと守りたいんだよ。私たち、おんなじなんだよ!死ぬときは共犯者でいさせて」
こうして、さとうに殺人を告白させ、犯した罪を共有することで仲直りをするのですが、この一件で絆が深まった2人は更なる破滅へと向かっていくのでした。めでたしめでたしー!
そんなどうしようもない共依存状態で走り抜いた「ハッピーシュガーライフ」ですが、実はどんな結末を迎えるのかはなんと1話でわかります。アバンタイトルでは炎に包まれたマンションの屋上に手を取り合う少女が2人。…SEKAI NO OWARI?と騒然としているうちに、しおがさとうに飛びつき、幸せそうに笑いながら落ちていきます。「やっと愛がわかった」というナレーションと共に。そう、これはさとうとしおの愛の物語であると同時に破滅への物語なのです。なぜ心中という選択をしなければならなかったのか、そもそも彼女は誰の家に住んでいるのか、しおやさとうの家族は何をしているのか、このブログだけでは多くの疑問が残ると思いますが是非アニメでお楽しみください。
そして、心情とリンクしている楽曲もすごく素敵なのでぜひ一度聴いてほしいです。キラキラしている感情だけじゃなく汚い感情も全部愛なんだと受け入れられたOP曲「ワンルームシュガーライフ」、この愛が朽ちる前に私の命をあげようとラストを示唆するようなED曲「SWEET HURT」、本当に物語に寄り添ってくれたよね。。もちろん曲だけでなく、2人がどんな結末を迎えるのか伏線が張られたストーリー性のある映像も素晴らしかったです。製作陣の皆様、本当にありがとうございました。
最後に、共依存状態のまま心中エンドと聞くとマイナスなイメージを持ってしまうけど、私は残酷で美しいラストだなあと思いました。家族=幸せという一般論を否定して、さとうと共に歩むことを決めたしお。最期は「自分の命に代えてでも守りたい」と自己犠牲的な愛情を抱くようになったさとう。本当は幸せになって欲しかったし、決してハッピーエンドとは言えなかったけど、2人の愛の証明とやらが一緒に死ぬことなら私は応援したいなって思います。
人はさとうを「ヤンデレ」「サイコパス」「キチガイ」だと嘲笑うけど、私はこんなにもまっすぐに人を愛したことがないのですごいなって思ってしまいました。それが歪んでいたとしても、過激だとしても、純粋な想いだと思わざるをえないこの愛を笑う理由なんてないと思います。私は、愛する人のために何でも出来ちゃう彼女が眩しかった。例え間違っていたとしても、信念を貫き通せる強さが羨ましかった。この作品はやっぱり少し変わってるかもしれないけど、私はたくさんの勇気をもらいました。私も好きな人を殺して永遠の愛を手に入れるくらいの気概が必要だったのかもしれませんね。
さよなら、私のハッピーシュガーライフ。